第3章 予兆
「リエ!」
アカデミー後の日課の修行中の、日も暮れかけた頃、リエの元にサスケがやって来た。
「サスケ?こっちに来るなんて珍しいね。どうしたの?」
「えっ……そろそろ夕飯だし…たまには…その……いいだろ」
いつもお互い別々に修行していて彼が迎えに来ることなどほとんどない(どちらかと言えばリエが帰りにサスケを呼ぶことの方が多い)為、サスケの不自然な行動に首をかしげながらもリエは彼に走り寄る。
黙って差し出した手をキョトンと見ているリエの手を自ら掴み、サスケは彼女を半ば引きずるように歩き出した。
「お前な…言わなくてもわかれって」
「あぁ!手繋ごうってことだったんだね」
「…今更かよ……ウスラトンカチ」
「あはは、ごめんね」
前を歩くサスケの耳がほんのり赤く染まっている。
照れながらも手をとってくれたことが嬉しくて、リエは彼に気づかれないように小さく笑った。
サスケの憎まれ口が、照れたときなどに出る一種の愛情表現なのだということは、一緒に過ごしていくうちにわかってきたことのひとつだ。
二人が知り合ってから早数年、サスケが自分のことを大切に思ってくれているということをリエは肌で感じていた。
同じようにリエもサスケのことが大好きで、大切に思っている。
それが恋愛感情というものかどうかは定かではないが。