第3章 予兆
でも―――
「ミコトさん、サスケはなんであんなに焦っているのかな」
夕飯の準備を手伝いながら、リエがミコトにそう問いかけた。
「サスケは才能もあって、それに努力家だから…きっと火遁だって出来るようになると思う。でもサスケ、最近無茶ばっかりして、怪我たくさんつくって帰ってくるでしょ?だから私、心配で…」
「そうね……あの人が初めて術なんか教えたもんだから、期待に応えたいのよ。イタチはすぐに何でも出来てしまうから、サスケもそうでないと認めてもらえないと思っているのかしらね。イタチは特別なのに、兄弟だからどうしても比較されちゃうでしょう」
それを聞いてリエはサスケの好物でもあるサラダ用のトマトを切る手を止める。
「確かにイタチはすごい忍だと思うし、何でも出来ちゃうけど…でも兄弟だからって比べるのなんておかしいよ。サスケはイタチじゃないもん。サスケは、サスケだけにしかない強さを持っているよ」
リエの言を聞いて、ミコトはハッとした。
無意識にイタチとサスケを比較している自分に気づき、心の内で自分を叱咤する。
「もっと強くなりたい、イタチみたいになりたいって私も思うから、サスケの気持ちもわかるの。でも、サスケのペースで頑張ればいいのにとも思うんだ。怪我ばっかりして、身体壊しちゃったら大変だし…サスケにしてみたら、余計なお世話なんだろうけど」
そして、それに気づかせてくれたリエに、ミコトは柔らかく微笑んだ。
「ありがとうリエちゃん。これからもあの子の…サスケの傍に、いてあげてね」
きっとあなたはサスケを救ってくれる存在だから、と。
サスケはリエといればきっと幸せになれるだろうと、このときミコトはそう確信したのだった。