第21章 隠された事実
男が放ったクナイは、女性の頬を掠めた。
「…最後の警告だ。殺されたくなければ従え。断れば娘から殺す」
男の無慈悲な言葉に女性はギリっと唇を噛み締める。
傷ついた頬から、一筋の赤が流れた。
「……言うこと聞けば、この子には手を出さないかい?」
「あぁ。約束しよう」
男のその言葉を聞くと数秒の沈黙の後、
女性は大きくため息をつくと膝を折り、後ろに隠していた子供を抱きしめた。
「…ごめんね、怖い思いさせて。
これから先、何があっても…あたしはずっと、あんたの心の中にいるからね」
そう言うと、女性は少女の小さな額にキスを落とす。
一瞬、淡い光が少女を包んだようにリエには見えた。
彼女の頭を撫でて微笑むと、女性は少女に背を向け、男の元に歩みを進めた。
((…ダメ…))
頭で考える前に、身体が動いていた。
((行ってはダメ!))
リエは女性の前に立ち塞がり、彼女を止める為に声を張り上げる。
しかしその声は届いていないのか、
女性の視線はリエを捉えることなく、真っ直ぐにリエの背後にいる面の男に向けられていた。
彼女のそれは、諦めた目ではなかった。
大事なものを守ろうとする、力強い瞳だ。
リエの身体をすり抜け、女性は口調荒く思いを言葉にする。
「ハッ笑っちまうね!あたしとあの人の血を引き継いでいる子を、あいつが放っておくわけないだろが!約束なんざ信じられるか。あたしも、あの子も、あいつの為に利用されるなんざ、まっぴらごめんだよ!!」
クナイを手にし、女性は敵を排除する為走り出した。