第21章 隠された事実
((ここはどこ?))
色のない、白と黒の世界にリエは立っていた。
辺りを見渡せばそこには家々が並び、店などもあるようだ。
遠くに火影岩のようなものが見えることから木ノ葉隠れの里内であるように思えたが、色のない風景に不安を覚える。
目がおかしくなったのかとも思ったが、リエ自身はいつも通りだ。
ならばここはいったいなんだと言うのか。
いつの間にここに来たのか、それすらもリエはわからなかった。
こんなところに来た覚えなどない。
そもそも、こんな場所は知らない。
((…誰かいないの?))
店を覗いても、声を上げても、誰からの返事もない。
この静寂が、空間が、恐ろしくて
リエは逃げるように駆け出した。
青い果実 21
しばらく走っていると、小高い丘に出た。
火影岩が先程より更に遠くに見える。
あれを目指して走っていたのに、遠ざかっているなんて
ここはやはり何かがおかしい。
「…………。あの方の命令だ。要求に従わなければ殺すことになる」
((…殺す?))
物騒な言葉が聞こえて、思わずリエは足を止めた。
そこには、黒の装束に身を包み面をした忍と、一人の女性が対峙している。
「はっ!ごめんだね!あたしはもう誰の命令にも従うつもりなんてない!」
「…強情な。ならば、お前の後ろにいる弱き者を殺す」
男の言葉に、ギクリと女性の肩が震えるのがわかった。
リエが目を向けると、確かに彼女の背中には小さな子供が隠されていた。
「大人しく言うことを聞け。その娘を守りたいのならば」
抑揚のない冷たい声でそう言うと、
面を着けた男はクナイを二本手に持ち、威嚇するようにゆっくりと一歩ずつ女性に近づいていく。
((ダメ、助けないと!))
リエは女性を庇うように前に飛び出たが、二人はなんの反応も示さない。
違和感を覚えつつもリエが男に攻撃を仕掛けるが、その身体に当たることはなかった。
男が避けたのではない。
リエの攻撃がすり抜けたのだ。
((どうして…?!これは幻術なの?))
そう思って幻術を解こうとしても、それは崩れる気配もない。
そうしている間にも、男は女性にどんどん歩み寄る。
男が持つクナイの刃先がキラリと光った。