第20章 思いの強さ
カカシに連れられて、リエは病院の屋上にやって来た。
青い空に白い雲。
今日も風が心地よい。
まるで今までの試験が夢だったかのように、平和な一時に感じられる。
長椅子に二人で腰掛けると、カカシが口を開いた。
「リエ、本選出場おめでとう。よく頑張ったな」
カカシがニコリと微笑み褒めてくれたので「ありがとうございます」とリエも笑顔を返す。
しかしその笑顔は、いつものような屈託のない笑顔とは言い難いものだった。
「ここまでこれたのは皆のおかげなんです。七班のメンバーはもちろん、他の班の友達にもたくさん助けてもらって…」
そう、死の森では皆が助けてくれた。
そうでなければ今、生きてさえいなかっただろう。
そして…あのサスケの力がなければ…
風が、俯いたリエの髪を揺らす。
「先生、サスケにつけられた呪印って…解けますよね?また今回みたいに力が暴走したりしませんよね?」
「…三次試験のときに力を抑える封印を施したから、使おうとしなければ何の問題もないよ」
「……そう、ですか…」
カカシは「解ける」とは答えてはくれなかった。
それほどの力を持つものなのだろう。
使おうとしなければ……
果たしてサスケは、そうしてくれるだろうか?
波の国の任務や中忍選抜試験で、サスケは自分以上の実力を持つ忍にたくさん出会った。
その度にサスケが己の力のなさに焦燥していたことは知っている。
そしてあの呪印がサスケを取り巻いたとき、サスケは言った。
『たとえ悪魔に身を委ね様とも、力を持たねばならない』と。
その呪印を付けた大蛇丸は『サスケくんは必ず私を求める』と、確かにそう言った。
あのときからずっと、リエの胸には大きな不安がつかえている。