第20章 思いの強さ
((これから…どうしよう))
なんとなく一人の家に帰りたくなくて、病院の待合室の椅子に座りながらリエは今後のことについて考えていた。
本選出場者はこれから修行に励むことだろう。
一人で腕を磨く者、師について教えを請う者、それは人それぞれだろうけれど、
自分はどうするのがよいのだろうか。
今までのようにガイに修行をつけてもらうことも考えてみたが、リーのことで心労いっぱいのガイに頼むのも気がひける。
それに、このまま体術を磨くだけでは、対戦相手のドスには勝てないだろうと思った。
ドスは超音波で攻撃してくる。
チョウジとの試合から見ても、触られたらアウトだと考えてもいい。
ただでさえ接近戦は向かない相手な上、体術は当たらなければ全くの無意味だ。
リーのように相手を撹乱させるほどのスピードも、一撃で沈められるほどのパワーも、今の自分にはない。
掠った程度ではたいしたダメージにはならないだろう。
手裏剣術を駆使したとしても致命傷にはならないし、それに先ほどカブトと戦ったときのような戦術はもう通用しないだろう。
相手は、全てを見ていたのだ。
風遁の術も、基本系は出来たが上級になるとかなりの時間がかかる。そもそも上級忍術を扱えるかもわからない。
一人でやるのも限界がある。
たった一ケ月でどこまでやれるのか。
((……前はもっと、がむしゃらだったのになぁ))
あまり深く考えもせず、ただ強くなりたいと修行に励んで。
この世界で生きる厳しさも、人の命をなんとも思わない人間がいることも
何も知らずに今まで平和に楽しく生きていたことを、この試験で実感した。
((負けられない。私には、守らなければならない人がいる…!))
ドスは音忍の中ではまだ良識がある方かもしれない。
けれど、笑って人を傷つけるような人に負けたくない。
それにサスケを狙う大蛇丸は、ドスとは比べられないほど遥かに強い。
前みたいに、何も出来ないままなんて嫌だ。
そんなことを考えながら握り締めた拳を見つめるように俯いていると、頭上から声が降ってきた。
「リエ、やっぱり来てたか」
名前を呼ばれ顔を上げると、目の前にいたのは
やっ!と片手を挙げた、笑顔のカカシだった。