第19章 中忍試験〜三次試験〜
先に動いたのはリエの方だった。
カブトから一定の距離を取ると、それを保ちつつ彼を囲うように周りを走り出した。
一方のカブトはそんなリエを警戒しつつ、相手の出方を窺う。
リエは走りながらクナイを取り出し、それをカブトに向かって投げた。
動き回りながらの攻撃とはいえ、リエとカブトの間にはいくらかの距離がある。
自分に向かって真っ直ぐに飛んでくるクナイを、カブトはなんなくかわした。
リエは足を休ませることなく走りながらさらに一本ずつクナイや手裏剣の数を増やし、カブトに等間隔で投げ続ける。
傍から見たら、リエの攻撃は苦し紛れにしか見えなかった。
あの程度をかわせなくてこの第三次試験まで来られるわけがないのだから、そんな単純な攻撃だけでは勝てないであろうことは誰もが予測出来る。
しかしリエにはちゃんと意図があった。
手にする手裏剣の量が六本になったとき、リエは投げる前に掌にチャクラを集めると、それを風に変化させ、小さな突風と共に武器を放ったのだ。
((風遁…烈風掌!))
当然風の勢いがついたクナイのスピードは今までと比べ物にならないほど速くなり、
一定のリズムでの攻撃に身体が慣れていたカブトは虚をつかれ、体勢が乱れる。
慌てて飛び退いたのはさすがだがしかし、リエがそれを読んで先回りしていたことへの対処は大幅に遅れてしまった。
「しまっ…?!」
ガードも出来ないカブトの鳩尾に、リエの膝蹴りが綺麗に入る。
思わず蹲ったカブトの首元にリエがクナイを当てると、ハヤテがリエの勝利を告げた。