第19章 中忍試験〜三次試験〜
「ヒナタ…ヒナタ!!」
リエが名を呼び続けるも、ヒナタはすでに意識がなくピクリとも動かない。
第八班担当上忍である紅が容態を確認すると、ヒナタは心室細動を起こしていると言う。
心室細動…数分間続くと死にいたるという、危険な状態だ。
「…そんな…!」
医療班の担架に乗せられたヒナタの手を握り、リエは声をかけ続けた。
「ヒナタ!ヒナタにはこれからもまだたくさん、やれることがあるんだよ。彼にだってまだ、自分の気持ちを伝えてないでしょ!だから絶対…絶対帰って来るんだよ!」
会場から出て行く医療班の背中を見送ったときには、静寂が会場を包んでいた。
ヒナタの手を握ったときについた彼女の血を見つめ、リエはぎゅっと己の拳を握り締める。
((…勝負だってわかってる。負けた方が傷付くものだってこともわかっている。でも…!))
感情的になっていることは承知の上、それでも、このまま黙っていることは出来ない。
ヒナタを傷付けた相手が、本当は優しい人だと知っているから、尚更。
「ネジさん」
リエはネジの傍へ歩み寄り声を掛けると、振り返った彼の頬を思い切り叩いた。
不意をつかれたネジは一瞬呆気にとられていたが、すぐに向き直りリエを睨みつける。
「なにをする」
「試合について私は何も言う権利がないことはわかっています。でも…最後の攻撃だけは、どうしても許せない!あなたはヒナタを殺したいんですか?家への恨みをヒナタにぶつけて、それで本当に満足なんですか?!」
「お前に…何がわかる!」
ネジが珍しく声を荒げる。
普段リエには比較的優しい彼も、今は頭に血が上っているようだ。
「日向の人間でないお前に何がわかる!?何も知らないくせに口を挟むな!」