第19章 中忍試験〜三次試験〜
「あ…あの……」
試合を決め戻ってきたナルトに、ヒナタが声をかける。
傷薬を持ったまま顔を赤くして口籠ってしまった彼女は、助けを求めるようにリエにチラチラと目を向けるが、リエは笑って言った。
「自分で渡してあげなよ、ヒナタ」
その方がヒナタにとってもナルトにとってもいいだろう。
ナルトは鈍いからヒナタの恋心には気付かないだろうけれど、きっと優しい気持ちは伝わるだろうから。
リエの言葉に触発され、勇気を出したヒナタは恥ずかしそうに傷薬をナルトに渡していた。
「サンキュー、ヒナタ!」
好きな人に受け取ってもらえて嬉しそうに微笑むヒナタだったが、掲示板に次の対戦が表示されると愕然と目を見開いた。
第七回戦、『日向ヒナタVS日向ネジ』
掲示板を見上げたリエは静かに俯き、ゆっくりと瞼を閉じた。
そしてリエは後方のヒナタを振り返る。
ヒナタは目を大きく見開いて掲示板を凝視したまま小さく震えていた。
”日向家”については彼女本人から聞いて、だいたいは知っている。
だからこそ、ヒナタに言わなくてはならないとリエは思った。
「ヒナタ」
声をかけられ、困惑した表情を浮かべるヒナタがリエを見る。
「頑張れ」
今まで一生懸命修行してきた、一生懸命生きてきたヒナタに、逃げてほしくなかったから。
その短い言葉に、リエは思いの全てを込めた。
「……うん」
それに応えるように、震える声で、それでもしっかりとヒナタは頷いた。