第19章 中忍試験〜三次試験〜
サスケが去ると、二回戦が始まった。
『ザク・アブミVS油女シノ』
あのザクという男に、リエは穢されるところだった。
思い出すだけでゾッとする。
「そういえば…あのときのリエも、本当にすごかったわね」
サクラの言葉に、リエは首を傾げる。
「あのとき?」
「アイツ…ザクってヤツと戦ってたときよ。リエったら、急に人が変わったみたいに強くなったじゃない。何が起きているのか私よくわからなかったけど、なんかこう…まるで風を操ってるみたいだったわ。リエ、いつの間にあんな術覚えたの?」
サクラの言葉が、リエは理解出来なかった。
((強くなった?風を操る…?そんなこと、記憶にない))
確かに、チャクラ修行をしてから、使える術は圧倒的に増えた。
自分に一番相性の良さそうな風遁の術も学んでいる。
でも、まだそれが成功したことなどないのだ。
((あのとき…何があったの?))
リエは懸命に記憶を辿る。
ザクがサスケ達を狙って駆け出したところまでは、ハッキリ覚えている。
このままだと、皆が危ない。
殺されてしまうかもしれない。
そう思って、そしてーーー
気が付いたら、傷を負ったザクが怒りの形相で、自分に馬乗りになっているところだった。
今まで何の疑問にも思っていなかったが、確かにおかしい。
ずっと余裕の笑みを浮かべていたザクが、いきなり豹変したこと。
彼が、あのときまで受けていなかった傷を負っていたこと。
それに、気が付いたときには全身に力が入らないほどに、体力もチャクラも残っていなかった。
何もしていないはずがない。
サクラが言うように、自分はきっとザクと戦ったのだろう。
それも、彼と同等か、それ以上の力で。
((…私もサスケのように、何か別の力に支配されていたの?でも…))
記憶が曖昧なことは、以前にも一度ある。
波の国に行く途中、カカシが敵にやられたと思ったときのこと。
急に頭が割れそうに痛くなって、その間の記憶がない。
((私は…いったい何を忘れているの?))
自分の中にある、得体の知らない力。
恐いと思う反面、リエはそれが何なのか知りたいと切に思った。