第19章 中忍試験〜三次試験〜
静かな雰囲気のまま、彼らは移動を始めた。
サスケとヨロイ以外の選手とその担当上忍達は試合を観戦する為上の階へと上がり、残された彼ら二人を見下ろす。
((サスケ…気をつけて))
リエは真剣な目でサスケを見つめる。
何も出来ないのなら、せめて見守りたい。
試験官のハヤテの合図によって試合が始まった。
やはりサスケは、いつもの力が発揮できていなかった。
しかもヨロイはチャクラを吸い取る能力を持っている忍のようで、今のサスケには最悪の相手とも言える。
しかしサスケは、呪印に飲み込まれそうになりながらも自らそれを跳ね除け、無事にヨロイを打ち破った。
以前リーが見せた、体術を使って。
あのとき写輪眼を使っていたサスケは、リーの影舞踊をコピーしていたのだ。
写輪眼を使いこなせているのは、さすがと言えよう。
サスケの勝利を見届けたリエは、手すりに手をかけると下の階へふわりと飛び降り、彼の元へと駆け寄った。
「サスケ、決勝進出一番のりおめでとう。身体…大丈夫?」
サスケの顔色を伺うように、屈んでサスケの顔を覗く。
「たいしたこと…ねーよ」
相変わらず首元を押さえながらも、サスケは強がって不適に笑った。
「でも…」
そして何を思ったか、サスケはリエの頬に手をかけ、
「勝利の祝いに、お前のキスがほしいところだな」
などと耳元で囁き笑った。
安心させようとしているのか、リエが赤くなって困っているのを見て楽しんでいるのか。
どちらにせよ、サスケが無事でよかったと、リエは安堵の息をつく。
と、そこへ
「はいは~い、そろそろいいかな?サスケは俺が医務室に連れてくからね」
いつの間にか背後にはカカシが立っていて、楽しそうに笑っていた。
「サスケを…よろしくお願いします。先生」
カカシは呪印のことを知った風だった。
カカシならきっと、何かしてくれるだろう。
「…リエ、負けるなよ」
医務室に行く為カカシに抱えられたサスケが、そう一声かけた。
以前ならば「気をつけろ」とか「棄権しろ」とか、リエの身を案じることを言ったであろう。
でも今は違う。
サスケはリエの力を認めてくれている。
「…うん!」
それが何よりの力になるのだ。