第18章 中忍試験二次試験〜死闘〜
サスケは躊躇もなくその手と脚に力を込めた。
ボキッ…ゴキッ…
妙に乾いた嫌な音が響いた。
それと同時にザクの絶叫も轟く。
彼は無残にへし折られた両腕の激痛に、脂汗を滲ませ狂ったようにのたうち回っていた。
耳を掠めた骨の折れる音と、ザクの悲鳴。
そしてサスケの瞳に宿る悦。
目の前で起こっている事態に、リエは言葉を失っていた。
((こんなの……サスケじゃない…))
優しい笑顔を浮かべるサスケも、拗ねるように不機嫌になるサスケも、今の彼の中にはいない。
己の狂気を残忍に笑う、リエの知らないサスケが目の前にいるのみだった。
「や、めて…サスケ……」
哀しみからか、動揺からか、無意識のうちに滲んだ涙に視界は霞む。
しかしリエの声は、今のサスケには届かないのか、サスケの残忍な衝動は収まらなかった。
最早凄惨とも言える表情で、狙う相手はもう一人。
「残るはお前だけだな…」
「!!」
見据えられて目があった瞬間、ドスの額に嫌な汗が流れた。
「お前はもっと…楽しませてくれよ…」
サスケは冷笑を貼り付けて、怯える彼に一歩また一歩と距離つめる。
((やめて…やめてサスケ))
力を振り絞って、無理矢理立ち上がる。
サスケを止めなければ。
その思いだけでリエは動いていた。
何かに取り付かれたように自らの手を穢すサスケ。
その行動は怒りからくるものだけじゃない。
相手を傷つけることを楽しんでいるようかのように見えた。
まるで、サスケにこの邪悪な力を与えた、あの男のように…
このまま彼が彼でなくなってしまいそうで。
彼が、いなくなってしまいそうで。
ーーー恐かった。