第18章 中忍試験二次試験〜死闘〜
「フン…また変なのが出てきたな」
ザクの言葉を黙殺したのは、いのだった。
「サクラ、アンタには負けないって約束したでしょ?」
思わぬ助っ人は鼻息も荒く旺盛。
リエ達は九死に一生を得た。
彼女らはすでに満身創痍。
戦えるどころか、逃げ出す術すら失っていたのだ。
三人の助っ人は、すぐに臨戦態勢に入った。
傍立って見ていたように、相手の欠点を見極めた戦術で追い詰める。
最初は乗り気でなかったチョウジも、ザクからの「デブ」と罵声を浴びた瞬間、人が変わったように好戦的になった。
「フォーメーション猪鹿蝶!」
いのの掛け声と共にチョウジの倍化の術で攻撃は始まった。
パワー重視のそれに回転を加えれば、対するザクの風圧など相手にもならない。
“肉弾戦車”という技名そのまま、チョウジは周囲の木々をなぎ倒し一気に距離をつめた。
ザクの術と相性が悪いと判断したドスは、身を翻し援護に向かう。
しかしそれを足止めしたのはシカマルの影真似の術だ。
対象の影を掴んで自由を奪うその技に身を取られて、ドスはシカマルによって好き放題に扱われた挙句、小馬鹿にしたポーズまで取らされている。
「何をしている、ドス!」
間の抜けた醜態を晒すドスに、苛立った怒声を投げつけたのはキンだ。
がなるように叫んでも、ドスの肉体はシカマルに奪われたままである。
「いの!後はあの女だけだ」
自由自在にドスの体を弄びながら、シカマルは促した。
「うん!シカマル、私の体お願いねー!」
“忍法・心転身の術”
いのの十八番の忍術だ。
アスマ班の三人は各自一族相伝の個性的な術を有しているが、その中でも異彩を放つこの技は、己の意識を対象に叩き込み肉体を支配する術だ。
それが為された後、いのの体は宿主を失ったように崩れ落ちる。
見事にキンの体は、いのの意識下に囚われた。
「これでおしまいよ!」
キンの中のいのは彼女自身にクナイの刃を向け、最後の一手を取った。
仲間の命が惜しければすぐに退けと、そういうことだ。
普通の忍ならば、これで勝敗は決しただろう。
しかし相手は仲間の命に価値も感じ得ない輩だ。
それを彼らは失念していた。