第16章 中忍試験〜一次試験〜
「……おい、リエ。とりあえず落ち着け。テキトーにやってりゃいいんだからよ、こんなの。気負うな」
あまりにテンパっているリエを見かねての彼の優しさだろう、小声で隣のシカマルが声をかけてくれた。
「…うん。ありがとうシカマルくん」
同じように小声でそう返すと、シカマルは気にするなと言うように小さく頷く。
シカマルの笑みにどこか余裕さえ感じて、なんとかリエは落ち着きを取り戻すことが出来た。
((う~ん…テキトーにってシカマルくんは言ってくれたけど、私のせいでサスケや皆まで落ちちゃうのは申し訳ないし。…でもこんな問題、アカデミー出たばっかりの下忍が解ける問題じゃないと思うけど。秀才のサクラちゃんならイケるのかな?難しすぎてそれすらもよくわかんないや))
問題を睨みつけながら、リエは考える。
下忍が受ける試験なのだから、解かせようとするならもっと基礎レベルのものを出してくるのが普通だ。
解けない問題を出す意味……
解けないならば、他から情報を流用するしかない。
そう、カンニングだ。
「カンニングをしたら二点の減点」というのも引っかかっていた。
カンニングをした時点では失格にはならない。
十点のテストからの減点方式なら、カンニングは四回までは出来るということだ。
そして試験管が言っていた“忍らしく”という言葉……
そう考えたとき、リエの中にひとつの答えが生まれた。
この試験は、隠蔽術を駆使した情報収集能力を測るテストなのだ。
サスケを含め、それに気付き出した受験者たちは己が持つ忍術を使いカンニングを始めている。
要は見つからなければいい。
そういうことだ。
((でも私…そんな能力、持ってない……))
サスケが持つ写輪眼や、ヒナタやネジが持つ白眼など、一族特有のものもなく、
波の国から忍術がまともに使えるようになったばかりの自分に一体何が出来るのだろうかと、
リエの中にまたも焦りが生じた。
((……………駄目だ、何も思いつかない…))
絶望のあまり、思わず頭を抱えてしまった。