第14章 中忍試験〜開幕〜
しかしそれはなされなかった。
先ほど尻をついていたロック・リーが、目にも留まらぬ速さで仲裁したのだ。
それは双方の攻撃軌道を完全に見切った動きだった。
リーは二人の力が抜けるのを見計らい、ため息をひとつ零した。
緊張を解いた…というのが適切な表現だろうか。
そこに落ち着いた声でネジが口を挟む。
「おい。約束が違うじゃないか。下手に注目されたくないと言ったくせに」
その口ぶりから、彼らが己の力量をひた隠ししていたことが伺えた。
敵を増やさぬよう、口裏を合わせていたのだろう。
彼らの実力を知っているリエからすれば、その選択は正しいだろうと思った。
「…だって……」
リーがちらりとサクラを見て、頬をほんのりと桃色に染める。
「これだわ…」
そんな彼の様子に、仲間であろうと思われる中華風の女が呆れたように肩を竦めた。
どうやら、いつものこと…といった様子だ。
「リーさん、ネジさん、お久しぶりです。お二人も試験受けるんですね」
リエがその二人ににこやかに話しかけるのを見て、サスケは驚いて目を見開いた。
自分の知らないところでリエが知らない男と仲良くしていたかと思うと、無償に腹が立ってくる。
しかもそれが自分の蹴りを簡単に止めた男ともなれば、余計に気に食わないのは当然だろう。
「リエさんも受けられるんですか!驚きました!」
「下忍になって間もないのに、頑張っているな」
リエが話しかけると、リーもネジも先ほどとは変わって雰囲気も穏やかになった。
その様子を見て、中華風の女はニマッと笑ってからかうようにネジを肘でつつく。
「ちょっとネジ~。いつも無愛想なあんたの口角上がってるわよ~」
「なっ……適当なことを言うな!」
ネジに怒られても何のその、悪戯が成功した時のようにペロッと舌を出す仕草がとても可愛らしいその少女に、リエは声をかけた。