第14章 中忍試験〜開幕〜
甘味処に着くと、ふくよかな女将さんが笑顔で出迎えてくれた。
「あら、リエちゃん。いらっしゃい」
「こんにちは!サクラちゃん、ここのお団子すっごく美味しいんだよ!サクラちゃんにも是非食べて欲しくて。私はみたらし団子にするけど、サクラちゃんは何にする?」
「…あ、うん……じゃぁ、同じので」
返ってきた言葉には、いつもの覇気がなかった。
普段のサクラは喜怒哀楽を隠さない明るい少女で、よく喋り華のように可愛く笑うのに。
こんな風に呆けているのは、彼女に似合わないとリエは思う。
「……サクラちゃんは中忍試験受けるの、不安なんだよね?」
リエの言葉にサクラの肩が震えた。
どうやら図星のようだ。
だがリエはそれ以上踏み込むことはしなかった。
サクラが自らの意志で開口しなければ意味がないことをわかっているから。
自分で話すことによって気づく心情だってある。
「……あ、あのね……」
サクラは必死に言葉を紡ごうとしていた。
「えっと……なんて言えばいいのかな……」
そう言って視線を彷徨わせる。
漠然とした不安は、言葉にするのは難しいものだ。
「私でよければ、なんでも聞くから。ゆっくりでいいよ」
ね?と、いつもよりも更に穏やかな声で言う。
そんなリエに頷いたサクラは、意を決し思うままに気持ちを吐露し始めた。
「……迷っているの。試験、受けるべきなのか…そもそも受けていいのか。私、自信なくて。波の国でも、私だけ何も出来なかったじゃない。サスケくんもナルトも…リエだって、皆強くなってるのに、私は何も変わってないんじゃないかって、すごく…思うの。私が七班にいていいのかなって思うこともあって……それで……」
注文した団子運ばれてきたことに気付かないほど、夢中でサクラは自分の気持ちを吐き出していた。
サスケまでとは言わないが、それなりにプライドを持っているサクラにとって、こんな内容を口にするのは屈辱的とも言えることだろう。
それでも、勇気はいったけれども、リエには話してもいいと、聞いてもらいたいとさえサクラは思えたのだ。
全てをやんわりと包んでくれる、
そんな雰囲気をリエは持っていたから。