第2章 第一章「ニホンの忌まわしき存在」
その日は、夢を見なかった。
それもそのはずだ。今まで見てきた夢の対象である彼らが、同じ家にいるのだから。
は早くに目が覚めると、コーヒーを淹れ、バルコニーに出た。そして、海を眺める。
すると、ぽん、と軽く頭を叩かれた。振り向けばそこにはゾロが立っている。
「おはようございます。早いんですね」
「まぁな」
「ゆっくり休めませんでしたか?」
「いや、なんとなくだ。お前は?」
「私は大体この時間に起きて、こうしてるんです」
ゾロが頷いたところで会話は止み、ただ波の音だけが辺りに響いている。
結局、麦わらの一味は当分の住む屋敷に居座る事になったのだった。
昨日のあの後の話だ。
「で、でも、私とは限らないですよ」
「お前、命狙われてたろ?」
「あぁ、変なおっさんに銃向けられてたな」
「あれは…私を邪魔だと思っている人たちがここには大勢いるから…」
「なんでだ?」
「…私が………いえ、分かりません」
言おうとしたある事実を飲み込み、は首を横に振って嘘をついたが、皆は特に不審がらずに納得した。
「、あんた今困ってる?」
「困ってるというか、そうですね、この状況をどうにかしたいとは思っています」
「なら、話は簡単ね。私たちは少女を救えという声に導かれて、異世界へ迷い込んだ。そしてそこには苦しむ少女、つまりあなたがいた。私たちのするべき事はひとつ。あなたを救う事よ」
「そうすれば、ここからも出られるかもしれねぇってわけだな!」
「でも、それが確かな事だという証拠が…」
「んなもんいらねぇ。違ったら違ったでそん時だ!」
「軽っ」
がついこぼす。
「こいつはこういう奴だ」
そうだ、の見てきたルフィは、こういう奴なのだ。
「…分かりました。皆さんが帰れるか、保証はできません。でも……助けてください」
「おう!」
九人が笑顔でそう頷いた。
そして、ここで宿を探すのは無理だろうと判断したは、この大きな屋敷に皆を泊める事を提案したのだ。
幸い、この屋敷に住んでいるのは、だけであった。家族も、彼女にはもう、いない。