第7章 テニスのお供に 〜海堂薫〜
「さて…これからどうする?」
「結構良い時間だね。後1個、何かできないかな〜?」
各スポーツの待ち時間をチラと見る。
すぐできそうなのは…。
「――――これか」
「お手本見せてよ!」
「手本っつったって…ンなもん打ち返すだけじゃねぇか」
テニスだった。
普通のコートじゃなくて、バッティングみたいにボールがマシーンで飛んできて、打ち返すタイプのやつ。
私?
私がやったらスカすところしか見せられないと思う。
だから、渋る海堂くんの背中を押して、その手にラケットを握らせてコートに送り込んだ。
「……」
丁寧な扱いを受けることはないのだろう、ボロボロ、とまでは言わないが古いラケットをジッと見て、二三度素振りをする。
使いにくい…かな?
自分のとは全然違うだろうけど…ほら、なんとかは筆を選ばずって言うし。
そうして、本当に難なく、小気味良いインパクト音が響いて。
海堂くんは汗一つかかずに戻ってきた。
うーん、格好良い。
そりゃーモテるわ、うん。
目つきすっごく悪いけど、それをカバーするよね、スポーツできるっていうのは。
「す、すごい…さすがだね!」
「別に…決まったとこにしか飛んで来ねぇからな」
ほれ、とラケットを渡される。
「……さっきみたいに笑わないでよね」
「それは宮脇次第だな」
「うぅ…」
「ちょっとそこで素振りしてみろ」
「えと…こう?」
ぎこちない動きでラケットを振ってみる。
「……それじゃ一生当たんねぇな」
「なんで?!」
「ガットの――ラケットの面が地面に並行になってる」
「へ?」
「フレームの…この、フチの部分がボールに当たるようになってる。…バッティングもできねぇのに当たるわけねぇ」
「ううぅ」
「初心者にはありがちなミスだな。まずはこっちの…網の面を押し出すように振る」
こうだ、と海堂くんが丁寧に教えてくれる。
おお、なるほど。
って!!
なに、この手取り足取り状態は?!