第7章 テニスのお供に 〜海堂薫〜
『着いたよ〜。西出口にいます』
既読になるのを確認して、私はポケットにスマホを仕舞った。
改札前にある付近の地図で、今日の目的地を探す。
………うう、ちょっと、緊張してる、かも。
これから行くところはデートスポットとしても有名なレジャー施設。
そんなところにまさか男の子と、しかも二人っきりで来るなんて想像もしてなかった。
それは、二週間ほど前のこと。
猫カフェからの帰る電車の中。
何となく読んでいた吊り広告に、一押しデートスポット!と書かれた文言を見つけた。
私はそこに行ったことがなかったから、何ができるんだろう?と単純に思って、猫の写真に夢中な海堂くんに声をかけた。
「ん? あぁ…テニス、バドミントン、バスケ…セグウェイとか。ポケバイにも乗れる。後はダーツと…釣り堀、パターゴルフとかだな」
「釣り堀なんてあるの?」
「俺が行ったところにはあった」
「へぇ…釣れる?」
「いや。餌も食い慣れてるんだろ。見向きもしねぇ」
「そうなんだ。でもちょっと面白そう。色々あるんだね」
海堂くんはテニスばっかりしてそうだね、と私が言うと彼はいや、と首を振った。
「テニスは…加減できねぇから」
「…なるほど」
相手が素人だと、ましてや彼女だと思いっきりできないよね。
「宮脇は行ったことないのか」
「うん。女の子同士では行かないかな。汗かくの嫌って子も多いし。興味はあるけどね〜」
「――行くか?」
「え? いいの?」
「俺も最近行ってないから」
「じゃ、じゃあ、ぜひ!」
「おぅ」
そこで、ちょうど駅に着いた。
「じゃあな」
「うん、バイバイ」
また明日、とは言わない。
授業が被っていても、毎回話すわけじゃないから。
そうしていつもの通り、コミュニケーションアプリで予定を合わせて今日に到る。
何だかデートみたい。
いや、はたから見ればデートだろう。
「うわぁ……」
そんなつもりはないんだけど。
でも、今日は楽しみだった。
どんな服を着ていこうか物凄く迷ってしまった。