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【テニプリ】短編集

第6章 猫カフェのお供に ~海堂薫~


 帰りの電車の中。
 私が撮った写真を見ながら、綻ぶ口元をキリリと引き結ぼうと頑張っている海堂くんの横顔を私はひっそりと見ていた。
(なんか、いいなぁ…見てて飽きない、かも)
 そんなことをボーっと考えていたら。

 プアーーー、と電車の警笛が鳴って急ブレーキがかかった。
「ふぁっ?!」
 いつも同じところで強いブレーキがかかるので、普段ならそれに備えて踏ん張っているのに、今日は違った。
 慣性の法則のままに私の体が動く。
「んぐっ」
 意図せず海堂くんの胸に飛び込む形になってしまう。
「っと…大丈夫か?」
 むぎゅ、と顔を押し付けてしまったので私は焦った。
 シャツにメイクがついちゃう…!!
 大した化粧じゃないけども!!

「わわわ、ごめん!!」

 慌てて離れて、シャツが汚れていないか確かめる。
 良かった…。
 無事、みたい。
 思いっきり鼻がぶつかっちゃった。

「ごめんね、たぶん、汚れてないと思う」
「?」
「ファンデーション。私、そんなに化粧濃くないから大丈夫だと思うんだけど」
「あぁ…別に、それくらい平気だ」

 海堂くんが呆れたように言う。

「ああ、びっくりした。ボーっとしちゃってた」

 恥ずかしいのを隠すようにうへへ、とわざとらしく笑う。
 やだなー、もう。
 こっぱずかしい。

「疲れたのか?」
「うぅん。ちょっと、海堂くん見てたから」
「…俺?」
「うん。顔、ニヤケそうになるの堪えてるの面白いな、って思ってた」
「…見るなよ」
「あはは。ごめんごめん」

 恥ずかしそうに目を伏せる海堂くんに、私はくすくすと笑う。
 ああ、そろそろ電車降りなきゃ。
 うーん。
 なんか、寂しいな。
 もっと一緒に居れたらいいのに。
 明日も会うのに、何故だかそう思った。

「それじゃ、また明日」
「ああ」

 バイバイ、と手を振って電車を降りる。
 いつか海堂くんがしてくれたように、その電車が見えなくなるまで見送った。
 家への帰路。
 私はスマホ片手にゆっくりと歩いていた。

『また亀吉に会いに行こうね~』

 猫のスタンプと一緒に送る。
 すぐ既読がついて、私の頬が緩んだ。

「あ」

 イェス!とVサインをする猫のスタンプが返ってきた。

「え……海堂くんが…イェス!って…」

 なんて激レア。
 私は思わずスクショした。




end

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