第1章 秘密の日課。~海堂薫~
目覚ましが鳴る。
時刻は05:27だ。
私はベッドから降りて、自室の窓のカーテンを開けて外を見る。
「おはよ、薫くん」
青いバンダナに黒のTシャツ、白のハーフパンツの少年を見つける。
窓は閉めたままだから、声は届かない。
斜交いの海堂宅から、幼馴染がランニングに出て行ったのだ。
毎朝、それを見届けるのが私の日課。
どのくらいの距離を走るのかはわからないけど、毎朝この時間に出て行って、6時20分を過ぎた頃に戻ってくる。
その後、着替えて朝ごはんを食べて、そしてちょうど7時に学校へ向かう。
朝練だけじゃ足りないから、走ってるらしい。
もう一度ベッドの中へ入る。
三つ並んだ目覚ましの時間を確認してから私は目を閉じた。
朝のランニングを終えて、シャワーをさっと浴びる。
母さんの用意してくれた朝ごはんを家族全員で食べて、俺は家を出る。
斜交いの家を見てみれば、2階の部屋の窓が開いて幼馴染が顔を出す。
「おはよ、薫くん」
琴子が手を振る。
「また後でね」
それに片手を挙げて応えたら、俺はバス停に向かって歩き出す。
琴子とは幼稚園の頃からの幼馴染で、今年は同じクラスになった。
しかも、今月からは席が隣同士。
窓際じゃないのが気に食わなかったが、琴子が隣だったから、悪くはない。
特に用事があるわけでもないが、琴子と話したいと思うことがよくある。
この気持ちは、何なのだろう。
しかし、せっかく同じクラス、そして隣の席になっても、何と話しかければいいのかは見当もつかなかった。
もちろん、琴子は他の女子と違って俺を怖がるような様子はないのだが。
バスに揺られながら、俺はそんなことを考えていた。