第4章 恋してみる?~乾貞治~
「……へ?」
今、あなたなんとおっしゃいました?
私、完璧にフリーズですよ。
「嫌じゃないんだろ?」
そう言って、乾は再び私の手に触れた。
大きな手が、私の手をふわりと包み込む。
「…嫌じゃない気がする」
さっき想像したときは、うえぇ、ってなったけど。
そうでもない。
「じゃ、また明日」
「え、あ、うん…」
ラケットの入った大きな鞄を担いで乾は教室を出て行った。
席に残された私は、まだ感触の残る手を見つめて、さっきの乾の発言を脳内でリピートする。
恋してみる?
恋してみる?って言ったよね?
え、何、どういうこと?
乾を意識しろってこと?
「…………」
意識って、どうやってするのよ?
乾にまた明日聞かなくちゃ。
End