第19章 grand finale √parallel
「それが俺だった、ってワケよ」
黒尾の言葉によって話が締めくくられる。ちらほらと挙がる「へえ」「ふうん」という反応。
ふと、何かを閃いたのは赤葦だった。
「じゃあ、その烏がいなかったら黒尾さんは、俺たちよりずっと先に生まれてたかもしれないんスね」
「お、面白いこと言うね赤葦」
満足げに小首を傾げる黒尾。
流れにのってカオリが「鉄朗が五歳上とかイヤだわー」と言葉を付け加えた。
計算が追いつかない木兎は、頭上に「???」を浮かべている。
「あ? 何がイヤなんだよ」
「大人の権力を振りかざしてきそうで」
「ああ、ちょっと分かります、それ」
「おい、どういう意味だよ」
「そのままの意味だよ、ね、赤葦くん」
年齢談義に華を咲かせる彼ら。
話題に乗りきれなかった木兎は、つまらなそうに、バレー雑誌をパラパラとめくる。そんな彼を気遣うのはやっぱり赤葦だった。
「……今月の特集は東北勢ですか」
ひとり寂しそうにする大きな背中に、そっと、声をかけてやる。すると、パッと顔を輝かせて木兎が振り向いた。
「おう!そして来月は俺が!載る!」
「この前取材されてましたもんね」
「カオリには一番に読んでほしい!」
木兎の言葉を華麗にスルーして、カオリは、その骨張った手から雑誌を抜きとった。どれどれ、と記事に目を通す。
それから、とある写真をみて吃驚仰天した。
「あーーー! 私の王子さま!」
その視線の先にあるのは、写真のなかで爽やかに微笑む、及川徹の姿。