第19章 grand finale √parallel
聖なる夜を待ちわびる町角。
路面店のショーウィンドウは華々しく飾りつけられ、道行く人々はどこか楽しげだ。
【Happy Christmas 2003】
クリスマスセールの開催を知らせる商店街のポスター。優しげに微笑むサンタクロースが、大きなプレゼント箱を抱えている。
アーケード通りの至るところに貼られたそれを、ぼんやりと見上げる少年がひとり。
薄汚れた服。ボロボロの靴。
その身体は痩せていて、剥きだしの膝小僧には青痰ができている。
少年は、思う。
何が「ハッピー」なのか。
自分のところにはサンタなど、来たことがない。幸せなクリスマスなんて、知らない。
星のしたで輝くツリー。
山のようなプレゼント。
こんがり焼けた七面鳥。
そんなの、ぜんぶ、ぜんぶ、幻だ。自分とは縁のない幸せの風景。どんなに欲しくても手に入らない。キラキラした世界。
「……きらいだ、クリスマスなんて」
ぽそ、とつぶやく。
恨めしげにポスターを見上げる瞳。
整ったその目元は渇いたままだった。流すための涙はもう、とっくに枯れてしまったから。
ドンッ
何かが、誰かが、少年にぶつかった。
「わ、……っご、ごめんね」
前を見ずに歩いていたのだろう。
少年の背におでこをぶつけて驚いているのは、彼と同じく、ボロボロの服に身を包む少女だった。