第18章 xxx ending √3:TETSURO
あまりの声量に驚いて、弾かれたように顔をあげる。目を真っ赤にして、鼻の頭も真っ赤にして、俺を睨む光太郎。
んだよ、お前も泣きそうじゃねえか。
「ここにいる、最……ッ高に、いい女の名前は?! 言ってみろ!! ほら、泣いてねえで答えんだよ!!」
「……っ、……黒尾、カオリ」
「そうだ!お前の嫁さんだ! じゃあ、カオリが一番愛したのは誰だ?!!」
「……! ……っ、……俺!」
「……ああ、そうだよ、お前だよ……だったらな、泣くな。カオリの旦那なら、最期まで! ……っこいつの為に笑ってやれよ!!!」
すでに、俺も光太郎もボロボロと雫を溢してるんだけど。でも。それでも。
ああ、そうだな、ごめん。
俺、笑うよ。カオリ。
「バーカ……お前、格好つけんな……っいつ、までも、俺の嫁のケツ追いかけやがって!」
「はあ? 人聞き悪いんだよ、……俺はなァ、生涯、独身貴族なだけ……っあああーーー!クソ! 目から汗が出てしょうがねえ!!」
「うっせ……声デケェぞ、光太郎」
「てめえ、俺にそれを言っていいのはな、…………カオリだけなんだよ」
シン、と静まりかえる部屋。
やっぱり聞こえるのはピッ、ピッ、という無機質な音。そこに足されたのは俺と、光太郎の、情けないくらいに下手くそな笑い声だった。
なあ、カオリ。
お前に出会えてよかったよ。
お前と恋をして、笑って、喧嘩して、また笑って。本当に本当に、楽しかった。
ありがとうな。愛してるよ。
愛してくれて、ありがとう。
細く皺くちゃになってしまった彼女の薬指。結婚指輪に寄り添わせる、最期の贈りもの。
「メリークリスマス、カオリ」
俺も、いつかそっち行くから。
それまで浮気せずに待っとけ。
「……誰よりもお前を愛してるぞ」
【TETSURO】__fin.