第18章 xxx ending √3:TETSURO
「……やめなよ、煙草、よくない」
カオリはとかく煙草を嫌う。
それが分かってからは、彼女がいる部屋では吸わないようにしてた。けど、見つかる度にこうして怒られるのだ。
どうしてそんなに嫌煙するのか。
聞いてはみたが彼女は答えようとはしなかった。
匂いがキライ、とか。
副流煙がどう、とか。
そういうワケじゃなさそうだけど。一体何が理由でそこまで嫌がるのだろう。
「……あ、もしかして、お前」
ピン、とある考えが閃く。
「俺の身体心配してくれてんの?」
今度はカオリがギクリとする番だった。
華奢な肩を跳ねさせて、俺を見上げる。ちょっと怒ったような表情。その頬は、リンゴのように赤い。
ああ、クソ、かわいい。
愛情。欲情。劣情。
ありとあらゆる感情が渦を巻いて、俺から【冷静】を奪おうとする。今にもフッ飛びそうな理性。愛しい。切ない。苦しい。
お前の全部が欲しいよ、カオリ。
「おや?おやおや? 図星かな?」
「~~~! うっさいクソ尾!」
「誤魔化しちゃって。かーわいーの」
からかうように言って。
自分の心を誤魔化して。
ふくれ面をするほっぺたを突ついたら、手首に強烈なしっぺを食らった。痛い。すごく痛い。
「ってえな!何すんだよ!」
「からかう黒尾が悪い!バカ!」
「こんのガキ、こうしてやる!」
そっぽを向いていた首筋に手を滑りこませる。冬のベランダで冷えた手。さぞ冷たかろう。
彼女から「ふぎゃ!」と奇声。
直後、振り向きざまに裏拳が飛んできたので、殴られる寸前でその小さな拳を捕まえた。バイオレンス娘め。
「離して! もう部屋入るっ」
「やーだね、離してやんねえよ」
「……離、してよ、バカ」
またそうやってバカとか言う。
そう、切り返そうと思ったのに。
ぶつかる視線。彼女の瞳。
潤んでる。どうして。何でそんなに悲しそうな顔すんの。ちょっとからかいすぎたかな。俺の手、そんなに冷たかった?
いや、違う、──これは。