第15章 extra xxx 003
それは小さな錠剤だった。
「より高い避妊効果を得るためにも、今すぐの服用をおすすめします」
世で言うところのアフターピルを差しだすのは【白布】という男。
少年にも青年にも見える彼は、淡々と、まるで機械のように薬効について説明していった。
緊急避妊薬を飲んでも妊娠してしまう可能性があるということ。服用回数とその副作用について。中絶に関する医師の指定と紹介。
つらつらと言葉が並べられていく。
最後に「この件に関してはすべて白鳥沢組の指示に従っていただきます」と念を押されて、水入りのペットボトルを渡された。
彼に促されるまま。
薬を服用する。こくり。喉が鳴る。空っぽの胃に冷たいものが流れこむ。
投薬が無事完了すると、今度は縦長のパンフレットが差しだされた。
「次に心療内科についてですが──」
映画でも観てるみたいだ。
たくさんある椅子のひとつに座って。大きなスクリーンを眺めて。まるで、すべて、自分のことじゃないような。
ただ景色が流れていく。
再生されるだけの映像のように、単調に、流れていく。
空虚なこころに漫然としてあるのは、言いようのない【罪悪感】だった。