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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第12章 xxx 11.幽閉



 彼の左腕を覆っていた包帯が解けていく。消毒液の染みこんだガーゼが剥がされて、露わになったのは傷痕。

 恐らく切傷だ。
 裂けた肉が黒っぽい糸で縫い合わせられている。

 その、あまりの痛々しさ。
 背筋がゾワゾワと震えた。

「あの……京治、さん」

 当然なのだがここはヘルスで、換えの包帯は備わっていないし、専用の消毒液もない。

 そのことを伝えようと口を開くと、京治さんは、まるで私の心を読んだかのような返答をする。

「帰ればあるから。包帯」

「そ、う……ですか」

「寮だからそんなに広くないけど、まあ、お前ひとり泊まらせる分には問題ないと思う」

「へ……泊ま、る?」

 突然の言葉に驚いて目を白黒させるが、彼は、相変わらずの無表情で淡々と話を続けた。

「ああそれから、カオリは今日でこの店、おしまい。明日からはもっといいところで働きな」

 あれよあれよという間に。
 話が進んでいく。拗れていく。私は理解が追いつかず、ただ呆然とするだけ。


「俺の側にいて、……カオリ」


 私を抱き締める彼の背中。
 純白の鷲が舞う彼の背中。

 恐る恐る手を回せば、ザラザラと、普通の皮膚ではない感触が掌に伝わった。

『覚悟しな』『絶対逃がさない』

 彼の台詞が脳裏に浮かぶ。

 求めたのは私だ。奪ってくれと願ったのも私。すべて私が望んだこと。もう、逃げることは許されない。

 京治さんの家が一番街を牛耳る【白鳥沢組】の所有マンションで、私は、そこの【若頭】が経営する高級ソープで働くことになるのだけれど──

 それは数時間後のお話。













 この町の最も暗い部分に、私は、触れてしまった。


xxx 11.幽閉___fin.
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