第9章 9月病
「9月病にかかりました」
「…9月病、ですか?」
「うん」
まだまだ残暑が続くがもう暦の上では秋と考えても大丈夫だろう。まあどんな症状かというとずばり夏休みをものすごく過ごしすぎて学校に行くという普通の日常がつまらなく感じる。という症状である。
なんかもうやる気がない。もうすぐテストがあるというのに勉強もしたくない(元々勉強しないが)
「僕はほぼ毎日バスケに打ち込んでましたから、1日練習に打ち込めなくて残念です」
「学校に来て勉強するということが面倒なんだよ…遅寝遅起きしたい」
「不健康です」
「深夜にアニメがやってるんだからしょうがないでしょ!」
はぁ…とまた溜め息を吐いて黒子君の席から外を見るとこれから体育なのか生徒がかったるそうに歩いていた。夏休み明けの運動って嫌だよね、わかる。
目の前にいる火神君は既に終わった英語の教科書を出したまま寝ており、思わず彼の椅子を蹴りたくなった。
「いいかげん僕の席から退きませんか?」
「えー…もう立ち上がりたくない」
「僕立ってるの辛いです」
「何を言う若いのに」
「同い年ですよ」
「いつ私が留年してないと錯覚していた」
「何嘘ついてるんですか」
「てへ」
今度は彼が溜め息を吐いていて、黒子君は「でも授業は受けないとダメですよ」とお母さんみたいなセリフを言った。
それを目の前にいる火神君言ってあげてよ、私よりこの子の方が進級できるか不安だよ。
「なんか刺激的な出来事か…何かないかな」
「…刺激的?」
「もっとこう…アニメみたいな感じの」
また溜め息を吐くと私の耳元でドンッと音が鳴り、目の前には黒子君の顔があった。わかる。わかるぞこれは。俗に言う壁ドンですよね。女の子が憧れるという、例の。
勝手にそんな風に話を自分の中で進めていると黒子君は少しずつ私の顔に自分の顔を近づけてきて、気付いたら頬にキスを落としていた。
「く、黒子君」
「…刺激的では、ありませんか?」
「や、あの、めっちゃ刺激つきました!」
「不快ではありませんでしたか?」
「全然!全然!ただここ、教室!」
今のでどうやら私の病気、9月病は治ったらしかった。が、次に私は黒子君に悩まされるようになった。
どうやら私が俗に言うリア充になれる日は、近いらしい。