第6章 【裏】全てをゆだねて。 ~明智光秀~
「あっ…はぁ…はぁ…」
ぽろ、と帯紐が琴子の口から落ちた。
「琴子…」
「みつ、ひでさま…」
どちらからとも無く口付けを交わす。
こく、と琴子の唾液を飲み込んでから唇を離すと彼女はくたりと私にもたれかかってきた。
「大丈夫ですか?」
「もう…体、動かせません…」
琴子の言葉に私は破顔した。
「すみません」
「光秀様の、馬鹿――」
嬉しそうな私に琴子は真っ赤な顔をして一言そう言った。
私はいそいそと立ち上がり、端にやった寝間着を引き寄せる。
自分が着るより前に琴子にきっちりと寝間着を着せて、すっかり乱れてしまった褥を整えなおす。
それから自分も寝間着を着て、褥に入り琴子を抱き寄せた。
「…ありがとうございます、光秀様」
少し申し訳なさそうに、そして恥ずかしそうにする琴子に私は首を振った。
着物を脱がせるのも着せるのも私でありたい。
秘め事の後でさえ、甲斐甲斐しく世話を焼きたいという私の意志を琴子は尊重してくれている。
「いえ…好きでしていることですから…貴女のことなら特に」
(いつも私は…貴女を繋ぎとめようと必死なのです)
貴女がこの腕の中で笑っていてくれるのなら。
私はどんなことでも引き受けましょう。
貴女に、ここに居て欲しいから。
額にそっと口付ければ、琴子はとても幸せそうに笑ってくれた。
End