第3章 【裏】誘い誘われ ~前田利家~
壊れ物を扱うかのように、けれどしっかりと犬千代は私を抱きしめた。
ふわ、とお酒の匂いがすると思ったら、口付けられていた。
少し驚いたけれど、私は抵抗せずに犬千代の唇を受け入れる。
背中に手を回して身を寄せれば、それはさらに深くなった。
「ん…」
「っはぁ…琴子…」
息苦しさに目を開けば、熱を帯びた菫色の瞳が私を見つめていた。
普段感じることのない犬千代の男としての色気に、心をかき乱される。
大きな体、癖のない髪、切れ長の目、薄い唇。
少し乱れた着物の合わせから見える鎖骨。
(どうしよう…どきどきする…)
今まで感じたことのない気持ちに戸惑う。
犬千代に触れられたい。
どこもかしこも、犬千代のものにして欲しい。
私の視線も熱っぽかったのだろう。
「おい…そんな、煽んな…」
余裕のない犬千代の声が耳元でしたかと思えば、首筋を舌が這った。
「んっ…」
ぬるりとした感触がぞわぞわと這い上がってくる。
すると何故だか胸の先端がきゅん、と固くなったのが自分でわかった。
(や、やだ…!)
犬千代の手が寝巻きの合わせからそっと入ってくる。
そしてあまり大きくはない胸を手のひらが包み込み、指先が頂に触れた。
「あ…」
「……もう固くなってる…」
「い、言わないで…んっ」
くにくにと乳首を摘まれて、恥ずかしさと気持ちよさで体が震える。
しゅるっと寝巻きの結び紐が解かれ、胸が露わになった。
ツンと尖った先を犬千代は口に含んだ。
「ひ、んっ…」
舌がぬるぬるとうごめいて、乳首を転がすように舐められる。
空いた方は犬千代の指で円を描くように弄くられている。
「んっ…ふぁ…」
たまにちゅぅ、と音を立てて乳首を吸われるたび、自分のものとは思えない甘い声が漏れた。
「――ひぁ!」
くにゅくにゅと優しく乳首を刺激していた指に突然きゅっと強く摘みあげられて、私の腰が跳ねる。
ちゅぽ、とわざと音を立てて犬千代が乳首から唇を離すので、そのあまりの厭らしさに私は恥ずかしくて両手で顔を隠した。
「隠すな。全部見せてくれ」
「無理…! 恥ずかしいもん…」
両手をどかせようとする犬千代に私は嫌々をして抵抗した。