第16章 涙色のセカンドキス
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兄は泣いていた。
大きな瞳から、宝石みたいな涙を幾つもこぼして、泣いていた。
「……っ俺も、好きだ……好きだよ、お前のこと……忘れるなんて出来るワケねえ……!」
きつく抱かれた腕のなか。
彼が囁くのは私への想い。愛の言葉。聞こえる。伝わってくる。私のことが好き。どうしようもなく好き。
今も、これからも、ずっと。
──ねえ、お兄ちゃん。
──……ん、なんだよ。
もしもの話、だけどね。
私たちがもっと大人になったら。バレーとか、兄妹とか、そういうの、全部乗りこえられるくらい、大人になったら。
もし、そのとき、まだお兄ちゃんが私を好きでいてくれたなら。
もう一度、こうして。
「──私と、恋をしてくれますか」
そう言ったら、お兄ちゃん、更に泣きだしちゃったの。それはそれはもう、まるで子どもみたいにね。