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(HQ) プラトニック・ラブ

第16章 涙色のセカンドキス



 *


「……俺だって、会いてえよ」


 妹の部屋の前。
 冷たいドアノブを握って、そこから、一歩も動けなかった。

 謝ろうと思ったのだ。

 そもそも、こうなったのは全部俺のせいだ。俺の調子が恋愛に左右さえされなければ、こんなことにはならなかった。

 誰も困らせずに済んだ。
 誰も傷つけずに済んだ。

 赤葦を、黒尾を、そして何より。


「…………かおり」


 そっと呼ぶ、彼女の名前。

 以前のように触れ合えなくても、会話くらいは普通にできるようになりたかった。兄妹として。家族として。

 もう一度、やり直せたらって。

 でももう無理みたいだ。

 だって、あいつ、すげえ泣いてる。

 聞こえる。伝わってくる。
 悲しみ。苦しみ。絞りだすような声。それでいて、きっと、俺に聞かれまいと嗚咽を我慢してる。

 手に取るように分かるのに、俺は、何もしてやれない。
 
 ──もし、この想いに素直になっていいのなら、今すぐにドアを開けて抱き締めてやりたい。
 
 きつく抱き締めて。

 髪を撫でて。

 せめて、その涙を。 

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