第16章 涙色のセカンドキス
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「……俺だって、会いてえよ」
妹の部屋の前。
冷たいドアノブを握って、そこから、一歩も動けなかった。
謝ろうと思ったのだ。
そもそも、こうなったのは全部俺のせいだ。俺の調子が恋愛に左右さえされなければ、こんなことにはならなかった。
誰も困らせずに済んだ。
誰も傷つけずに済んだ。
赤葦を、黒尾を、そして何より。
「…………かおり」
そっと呼ぶ、彼女の名前。
以前のように触れ合えなくても、会話くらいは普通にできるようになりたかった。兄妹として。家族として。
もう一度、やり直せたらって。
でももう無理みたいだ。
だって、あいつ、すげえ泣いてる。
聞こえる。伝わってくる。
悲しみ。苦しみ。絞りだすような声。それでいて、きっと、俺に聞かれまいと嗚咽を我慢してる。
手に取るように分かるのに、俺は、何もしてやれない。
──もし、この想いに素直になっていいのなら、今すぐにドアを開けて抱き締めてやりたい。
きつく抱き締めて。
髪を撫でて。
せめて、その涙を。