第16章 涙色のセカンドキス
言葉にできるなら、少しは楽になるのだろうか。
黒尾先輩からのメッセージ。
暗闇で光る画面に映ってる。
【ごめん、】
別れてから30分。
送られてきたのはたった一言だった。この読点のあとに、どんな言葉が続いていたのか。それは先輩にしか分からないけれど。
別に、謝ってほしかったんじゃない。怒ってない。咎めてもいない。
ただ、──悲しい。
先輩のことは好き。恋愛感情ではなく、人間として。なんだかんだ優しくて、気さくで、思慮深い。そんな彼が好きだった。好きだったのに。
黒尾先輩も、一緒だった。
私を疎ましく思ってた。兄の飛躍のためには私が邪魔だって。そう言った赤葦と、一緒だった。
先輩も。赤葦も。
兄のことが好きで、大好きで、そして大切なんだと思う。男とか。女とか。そんなちっぽけな括りじゃ分類できない。
木兎光太郎という人間は、周囲のすべてを自分に惹きつける。それほどまでに魅力的なのだ。
わかってる。
わかってた。
お兄ちゃんの調子が、良くも悪くも、恋愛に左右されてたこと。
わかってたのに、どうすることも出来なかった。どうすることも、しなかった。だから皆、私がいなければいいって。
そう思ってた。
「…………イタイ」
どこが痛いのか。
なにが痛いのか。
どうして、こんなに涙が出るのか。
言葉にすることができない。