第14章 傷ついたふくろう
冬某日。深々と冷える体育館。
兄率いる梟谷排球部は、本戦前最後の練習試合に臨んでいた。相手は関東近縁に散らばるグループ校の面々だ。
夏に観たときは東北からも一校参加していたが、今回、彼らの姿は見えない。遠征は何かと大変なのだろうか。
「木兎さん」
名前を呼ばれて振りかえる。
体育館に常設された舞台の上で、演劇部の部長さんが手招きをしているのが目に入った。
今日は私たちも【ここ】で活動するのだ。兄が、赤葦が、黒尾先輩が、試合をしているこの体育館で。
来たるシンデレラ公演。本番に向けた舞台のセッティング。大小道具やら、衣装やら、必要なモノを舞台裏に運び込まなくてはならない。
「ええと、それじゃあ早速──」
部長さんが号令をかける。
各自仕事に取りかかる部員たち。
私の仕事は、小道具を舞台袖に並べて、それから床のモップがけをすることだった。