第10章 馬鹿じゃないの
意味が分からなかった。
『私、黒尾先輩と付き合う』
『だからもう』
『部屋に来ないで』
突然の言葉。かおりの言葉。
何度も何度も、それこそ嫌になるほど考えたんだけど、それでもやっぱり分からなくて。
どうしてかおりが。
どうして黒尾が。
何であいつらが付き合ったりすんのか、俺には、全然分からなくて。ああ、なんかもう、全部全部どうでもいいや。
そう思った。
「木兎! 危ねえ!!!」
パリ──……ッン
なにかが弾け飛ぶような、そんな衝撃と破裂音だった。直後に感じたのは痛み。肌を流れる生ぬるい熱。
「痛、って……何だよ」
左腕のほうに視線を下ろして、痛みと熱の正体を知る。目に入ったのは赤。パックリと裂けた皮膚から流れ落ちる、鉄臭い、赤だった。
あれ、なにこれ、血?
そう思ったのを最後に、俺の意識は暗闇へと落ちていった。