第8章 悪いことしましょ
「何はぐれてんだよお前」
ボフッ、と何かが脳天に降ってきて、直後に肩を抱かれた。私に手刀をかましたのは、他でもなく黒尾先輩で。
「で、アンタなに。俺の女に何か用?」
187㎝から見下ろされて、キャッチは尻尾を巻いて逃げ去っていくのでした。
「……黒尾センパイ」
「なあ、かおりちゃんよ。今の俺……めちゃくちゃ格好よくありませんでしたか」
「そういうこと言わなければかっこいいのにですね、残念」
わざわざ溜めまで作って何を言ってるんですか。至極冷たく言い放つと、黒尾先輩は、喉を鳴らして楽しげに笑う。
「一回言ってみたかったんデスヨ」
「そうですか、夢が叶ってよかったですね。じゃあもうその腕離してください」
「いいじゃん仲良くしよーぜ」
「お気持ちすらお断りします」
ジクジクと痛むこころに何重にも鍵をかけて、そっぽを向く。
華やいだ都会の夜だった。
悪いことしましょ___fin.