第6章 こころの境界線
「知ってた? アンタのお兄さん、木兎さんってね、凄い人なんだよ」
単体の実力だけで言えば、本当は全国三本の指にも入れる。それだけの力が彼にはある。
なのに、こいつのせいで。
「……調子にムラさえなければ、木兎さんはもっと上へ行ける」
なのに、お前のせいで。
だから邪魔なんだ。目障りなんだよ。
俺がどうしようもなく憧れた、あの人に、木兎光太郎という選手に。
「俺はね、頂の景色を見せてあげたいんだ。それが俺の存在価値」
だから──
「だから、消えてくれるかな」
俺たちから出てってよ。
こころの境界線___fin.