• テキストサイズ

(HQ) プラトニック・ラブ

第5章 狂いだす



「かおり、起きてるか」

 兄の声が響いたのは、時計の針が真上で重なろうとする直前の、23:56のことだった。

 布団に潜りこんで丸くなっていたが、慌てて起き上がる。
 ぼさぼさの髪を手ぐしで整えて、それからドアに駆け寄ると、こちらから開ける前に勢いよく扉が開かれた。


「こ、たろ……お兄ちゃん」


 目の前には仁王立ちの兄。

 ああ、これは、あれだ。
 怒ってる。それも凄く。

 何かとてつもなく気に食わないことがあったらしい兄は、腕組みをして、高い位置から私を見下ろしていた。

 怒鳴り散らしたりはしない。
 感情的になったりもしない。


「かおり、お前、……俺に言わなきゃいけねえことがあるよな」


 兄はその名と見目に恥じることなく、静かにキレるのだ。

/ 96ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp