第1章 プロローグ
学校が終わる。
練習着から私服に着替えて友達にまた明日の挨拶をして教室を出る。
これらの一連の動作はもう一年とちょっと続けている訳で、学校の仕組みも理解している。
ただ一つ違うと言えば帰り道。
いつからだろうか、それはとても自然と塗り替えられていた。
入学してから2年生になるまで歩いていた通学路とは逆の方向に進み、私は学校から約5分のアパートへと足を踏み入れる。
少し古びた外見。
自分が住んでいるオートロックのマンションよりセキュリティは甘いが、男の一人暮らしの家であるならそれ位が妥当なのだろう。
階段を登り何の迷いもなく突き当たりの部屋の前へ。
鍵とキーホルダーをまとめた物の中から、この部屋に入るための鍵を見つけて鍵穴に差し込む。
ガチャンッと鍵が開く重み。
扉が開くと部屋の中は真っ暗で、私は手探りで灯りをつけるためのスイッチを見つける。
「……ふぅ」
田舎に住んでいた頃はカーテンを開けているのは当たり前だったけれど、マンションが立ち並ぶこの街に住めばカーテンを開けることなど滅多になくなってしまう。
自分が住んでいる部屋よりも広い部屋の中へ足を踏み入れ、私服を脱ぎソファーに投げる。
結んでいた髪を解き部屋着にしているパーカーに腕を通した私は、マグカップに砂糖をたっぷり入れたコーヒーを作ると、テレビの電源を入れた。