第4章 変わらない君
「 なあ、 」
目の焦点も合わせずに
低い声で彼女を呼んだ。
あの電話の数時間前。
「 ん?和くん どうかした?」
自分とは正反対に
呑気そうな声の。
それがまたイラつかせる訳。
「 俺以外に付き合ってる人いるでしょ 」
「 えっ...?」
睨むようにして彼女に言った。
彼女は戸惑った顔をする。
それはどういう戸惑いなのか。
「 そんなことない...
和くん以外に付き合ってる人なんか... 」
涙目になるなんて
今の俺には目に入らなくて。
ただ俺が見た事実だけが
脳裏によぎってた。
「 俺、見たんだよね。
が他の男と
二人で歩いてるとこ。
前から友達からも聞いてて
俺、どうしていいか
分かんないんだけど 」
こんなんでキレるなんて
ちっせえ男だって思ってた。
けど自分のことになったら
どうしようもないくらい
気に障って仕方ない。
は呆然と
そこに立ち尽くす。
「 そんなに俺じゃ足りなかった?」
「 違う... 和くんじゃ足りないとか
そういうことじゃなくて...!」
男と一緒にいたことは
否定しない。
やっぱりそうだったのか。
この時の俺は何もかも
悪い方向に受け取ってた。
「 違うの!あの時一緒にいたのは... 」
「 出てってくんねえかな 」
何も聞きたくなかった。
言い訳も何も。
事実だけで十分だ。
「 俺、今ひとりでいたいから 」
冷めきった声で言い放った。
は声を失ったように
何も言わずに玄関の扉を開けた。
いつもとは違って
私の物は何も持って行かずに。
でもいつも通り
私の大事な物はいなくなった。