第15章 甘酒、干柿、減らず口
「成る程!いよいよ不公平ですな!」
「うるさいですね。早く食べなさい。それはね、牡蠣殻さん。私が手ずから拵えた干柿ですよ?食べないと言うなら私にも相応の考えがあります」
「・・・何で脅しつけられてるんですか、私は。ホワイトデーって何なんです?もう少し違う雰囲気のモノなんじゃないですか?」
「それはこっちが聞きたい事ですよ。雪も消えた頃合いに何が白い日ですか。それこそ訳がわからない」
「白は純潔の証って事でホワイトデーらしいですよ」
「何ですか、それは。馬鹿らしい」
「一刀両断ですね。相も変わらず清々しい。実に遺憾なく干柿さんらしいです」
「何ニヤニヤしてるんです。気味の悪い」
「え?いや、この干柿は干柿さんの純潔の証とやらだと思うと、ブッ」
「あなたの愛の証とやらは悪質なウィルス入りの甘酒でしたね。人を笑ってる場合ですか」
「・・・呑むなって言いましたよ?止めましたよね、私」
「そうでしたか?」
「ちょっと待て。自己責任どこ行った?」
「負うだけのものを負ったからあなたといるんでしょう。自己責任で」
「・・・何ですか、人を病原菌そのものみたいに・・・」
「ほう。たまにはあなたの発言も的を射る。目から鱗が落ちましたよ」
「鮫に鱗はありません」
「あなたさっきから何です。人が誠意を示しているというのに下らない事ばかり言って、全くどうしようもないバカですねえ。人の好意は素直に受けるものですよ」
「仰る通り私はバカですからね。ホワイトデーに干柿さんから干柿なんか頂いても何の受け狙いかと当惑するばかりですよ。干柿さんから干柿ですよ?・・・プ」
「・・・今のは失笑という事でいいんでしょうかね?甘酒の牡蠣殻さん」
「え?失笑なんてそんな。ただの苦笑いですよ、干柿の干柿さん」
「・・・・あの二人は干柿を挟んで何を延々と話しているんだ?」
ぼそぼそと言い合い続ける鬼鮫と牡蠣殻を眺めて角都が呆れ顔をした。
「ほっとけよ角都。あら犬も食わねえってヤツ」
卓に足を載せて、椅子に背中を預けた飛段がニヤニヤする。向かいのデイダラは二人の方を眺めて頷いた。
「鬼鮫は牡蠣殻といるとよく喋るな、内容は兎に角。うん」
「気が合うんだろう」
「バカか。何が聞こえてんだ、オメエの耳には。耄碌してんのか、イタチ。角都と完全看護の老人ホームへでも行っちまえよ。たく、ボケ老人が二人って大丈夫かよ、暁」