第2章 B型ってヤツは・・・ー大蛇丸、カブトー
「はあ・・・ねえカブト。アタシ、最近ちょっとヤバいのよねえ・・・」
悩ましげに打ち明け口調で切り出した大蛇丸に、血まみれの割烹着を着てセッセと作業していたカブトは薄笑いした。
梅雨真っ盛りの六月下旬、ぬめやかな日和の事である。
「大丈夫ですよ、大蛇丸様。何か問題でも?」
「・・・何ソレ?人がヤバいって言ってるのに、大丈夫ですよ何か問題でもってどういうわけ?アタシにどうリアクションしろっての?」
「ご機嫌斜めですね。ボクはただ大蛇丸様がヤバいのは色んな意味でいつもの事だから、大丈夫、何の問題もないと、そう言いたかっただけです」
「そう。喧嘩を売ろうってのね。いいわよ、アタシはどっかのヒジキみたいなシミッタレじゃないから、じゃんじゃん買っちゃうわよ?こう見えて計画性もないんだから。ガッツリ衝動買いしてやるわ。カード破産なんかクソくらえよ?」
「ああ、角都さんは喧嘩も売り手ですね。あの人が何かの買い手市場に顔を出すなんて事、今世紀中にあるのかな?・・・ないな。うん、ない」
作業の手も止めず、更に途中からひとり言を言い出したカブトに大蛇丸はイラッと眉をはね上げた。
「ちょっと?今はアタシの話をしてるんでしょ?何でヒジキが出て来るのよ」
「角都さんの話を出したのは大蛇丸様じゃないですか・・・・いや、いいですよ、わかりましたよ。すいませんでした。それで?一体何がヤバいんですか」
「・・・それがねえ・・・」
大蛇丸はまた悩ましげな表情を浮かべて、窓の外で雨にうたれている紫陽花を物憂げに見た。
・・・見た。
・・・・見ている。
・・・・・まだ見ている。
「・・・・・・」
カブトは無言で作業に戻った。
しばらくの間、雨の音だけが静かに辺りを満たし続けた。
「・・・ねえカブト・・」
「(今度は)何ですか?」
「何でフランス人て、カタツムリなんか食べようって思ったのかしらね・・・?」
「・・・・・・」
見れば確かに紫陽花の葉の上をカタツムリがのびのびと這っている。
「他にいくらでも食べるものがあるじゃない?何でカタツムリなのかしら・・・ボンジュールとかセボーンとか言って気取っちゃってるのに、今ここに連れて来たりしたらウイウイ言いながらアレを炒めたり蒸かしたりして食っちゃうのよ?アイツらは。何考えてんのかしらねえ・・・」