第10章 雪合戦ーサソリ、飛段、デイダラ、小南ー
「ゆぅき雪雪雪ィィ!!!雪積もってるよ、牡蠣殻さん!」
頓狂な声と共に冷たいものが布団に潜り込んできた。
「・・・・ゆき・・・」
傍らの藻裾から表の匂いがする。
「それは・・・盛り上がりますね・・・・。外套が濡れてますよ、汐田さん。布団から出なさい?」
低血圧の大見出しを貼り付けたような顔つきをした牡蠣殻がモソモソと起き上がった。枕辺の眼鏡を手探りでとり、ぼさぼさに寝乱れた髪をかきあげてからそれをかける。
ぼんやりと窓の表を眺め、牡蠣殻はほうと目を瞬かせた。
「また随分と様変わりしましたねえ・・・」
表は雪が積もって何もかもが白く丸く、尚も羽毛のような雪片がしんしんと降り続いていた。
「さっみィですよおォ!?おっもしれェですよおォ!?雪合戦サイコーすよおォ!!!」
布団から顔を出して藻裾が朗らかに笑った。
「・・・雪合戦?あなたと?・・・それは・・・・ああ、・・・・その、最高に・・・・あの、相手方は誰です?・・・無事なんですか?」
歯切れ悪く言う牡蠣殻に、藻裾は飽くまで朗らかに答える。
「相手ェ?デイダラですよお?」
「あ、矢っ張り?ハハハ。・・・で?大丈夫なんですか、デイダラさんは?」
髪を引っ詰めて袷を羽織りながら、牡蠣殻は部屋の暖房に火を入れた。
「今ァ雪山に頭突っ込んで来たから、今頃暴れてっか、動かなくなってっか、どっちかな!」
「・・・ムゴい・・・・」
「えー?あはははは、牡蠣殻さんもやりましょうよお!!!楽しっスよお!!!」
「いえ、私は寒いのは苦手で」
「暑いのも苦手じゃねェですか。どっちも苦手ならどっちだっていいでショ?はい、外套着て、行きますよ!」
「・・・また随分と乱暴な事を言いますねえ・・・私はここから見守ってますから。大人しく。しんねりと」
「サソリのオッサンもいますよォ?後ろをとるい~い機会スよ?」
「何を期待してるんですか、貴女は」
「ん?愉快な雪合戦?」
「そりゃ傍目には愉快かも知れませんけどね。取り合えず貴女、デイダラさんを掘り出して来たらどうで・・・・」
牡蠣殻の顔の真ん中で、雪玉が炸裂した。
「・・・・誰ですか?この雪玉の主は?」
「ゲハハハハッ、ドッストラーイクッ、ナイスピッチン、俺様あァァ!さあァァ、次はどいつだあァ?かかって来いやああァァ!」