第8章 お守りー我愛羅ー
この日、四代目風影の弟阿修理の葬儀が執り行われた。
寡婦となった叔母杏可也はその後砂の里で一年を過ごしたが、里長を務める弟を手助けする為に生まれ里の磯へ帰って行った。
「・・・・お守りか・・・・」
執務室から夕暮れの砂漠を眺めて我愛羅は呟いた。
砂漠は朝焼けに照らされたときとはまるで違った顔を見せて、やはり美しい。
今再び砂に戻った杏可也のお守りは誰なのだろう。
夜叉丸を殺めた今の自分のお守りは何なのだろう。
人の心は目に見えないもの。そして更には移ろうもの。
我愛羅は立ち上がって窓を閉めかけ、砂漠を横切って来る小さな鳥影に気付いて手を止めた。閉めかけた窓を開け放つ。
口は悪いが退屈しない手紙がやって来た。他愛ない話題や口の悪さが慰めになる事もある。
我愛羅は榛色の鳩を待って椅子にかけ直した。
砂漠は変わらず美しい。
人は流れて変わるもの。そしてそれは生きているという事。
「そうだな・・・今の俺には沢山のお守りがある」
五代目風影、砂の我愛羅はそう呟いて微かに口角を上げた。
陽は夕暮れ、月は空の東、砂漠と仲がいい。