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閑話休題?ーNARUTOー

第46章 杪冬の折り、埒も無く。



手を繋いで歩きたいな。

柄じゃないとは思っても。
不意にそんな気持ちになるときがある。

いつも少し後ろを歩く。何となく。
誰といてもそうする癖がある。あっちを見たりこっちを見たり、気を散らしながらぼんやり歩くから誰かと調子を合わせて並ぶのはあまり得手じゃない。後をついていくくらいが丁度いい。
そういう私は同行者とよく逸れる。
置いて行かれることも多々ある。
まあ当然だ。自業自得。

だけどあの人はそんな私をよく振り返る。
逸れる前に、置いて行かずに、振り向いて顧みる。

手を差し伸べたり笑いかけたりはしない。ただ振り向いて立ち止まり、私を待つ。
辛辣なことを言う。呆れ顔をする。時々ーいや、結構頻繁に拳骨を落とす。
でも、あの表情の読み辛い不思議な目が、足を止める間苛立ちや腹立ちを孕むことはない。だからといって優しくはないし笑いもしない。
当たり前のものを見るような淡々とした目で、何心無く私を待つ。

何を考えているんだろうと思う。
意外に気が長いとは手が早く、打てば響くように嫌味ばかり言う本人談だが、その通りだ。血を見るのを厭わない兇猛な人なのに、容易に猛らない平かさがある。怒るし手を出すけれど、それもこの人においてはほんの戯れ、何しろ本気を出されたりしようものなら死んでしまう。私が。
この人はそういう人。

優しい。

そう思うのは間違いではないし、間違いでもある。
この人はそういう人。
でもどっちでもいい。私はこの人を優しいと思う。

優しいと思うと、腹がぎゅうと縮まって喉が詰まるような妙な感覚に襲われる。
そして、手を繋いで歩きたいな、と、埒も無く魔に差される。

手を繋いだことがないわけではないけれど、
何ということもなく、ただ繋ぎたいと思いつくままに、そういうときに繋いでみたい。

自分の気持ち、そのままに。

でもそんなことしたくないし、出来ない。意固地で頑なな気持ちの塊が心の中で右に左にコロコロ転がる。
溶けることも砕けることもないこの意地は、この人と一緒にいるうち削られて摩耗して、随分小さく丸くなってきたように思うけれども。

いつかそのうち。

もっとちゃんと色んなことが伝えられたら。

もっと沢山、色んなことを伝えて貰えたら。

もう少し、あの奥深い心の底を見通すことが出来たら。
そしたらもっと素直になれる気がするけれど。

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