第42章 秋の夜長の暇尽くし ー暁ー
「暇だともの寂しくもなるな」
帳面を繰って角都が笑った。
「お前もデイダラと夜通し映画鑑賞したらどうだ」
「…どうせならもう少しマシな過ごし方をしますよ」
苦笑いして立ち上がった鬼鮫が室を出て行くのを、デイダラの欠伸が送り出す。
「オメェはもう寝ろ」
呆れるサソリにデイダラは首を振って答えた。
「今日は豊川悦司長谷川博己吉岡秀隆の三本立て」
「…金田一か。この馬鹿め」
「高倉健石坂浩二西田敏行」
「ジジィ、黙ってろ。古ィな、おい。高倉健てオメェ、金田一はスポーツカーなんか乗らねえ。あれは認めねえぞ、俺は」
「愛川欽也渥美清片岡鶴太郎」
「…イタチ。そのチョイスは嫌いじゃねぇが黙ってろ」
「金田一ったら古谷一行だろー?」
「オメェも金田一なんか観んのか。意外だがとんでもなくどうでもいいな…。やっぱり黙ってろ、飛段」
表の虫がひと声鳴いて、それに追随した輪唱が夜気を震わした。夜はまだ宵、月は西天、暁の気怠い秋夜は深閑と更けていく。
「皆で金田一祭りでもすっかぁ?」
「しねぇよ!」
飛段の能天気な声がサソリの一喝に掻き消され、聞こえるのはまた虫の音ばかり。
どっとはらい。