第39章 雪の降り積む ー路地裏イチャイチャin干柿鬼鮫&牡蠣殻磯辺ー
同じ雪に降られる。雪の路地裏で抱き合う。
年の瀬の賑わいを尻目に、半ば閉じた場所で拉致のあかないやり取りをする。自分のしていることではないような奇妙な気がする。
「いやあ、何だか今日の干柿さんは優しいですね。年越しを間近に感傷的になってらっしゃるんですか?」
水を差す牡蠣殻はいつもと同じ。
鬼鮫は牡蠣殻の額に口を寄せて、笑った。
「来年もよろしくお願いしますよ。早く戻って来れるよう精々お励みなさい。あまり長引くようならば引き摺って帰りますからね」
「それはみっともよくないですねぇ…。わかりました。引き摺られないように頑張ります。干柿さんも、よいお年を」
路地裏に雪の降り積む。
もう少しだけこのままで。別れは簡単に告げられるのだから、もう少しだけ。
力を込めて抱き付いて来た牡蠣殻を抱き返し、鬼鮫は瞠目した。
互いに、よい年を。
離れても尚温もりが去らないよう、熱を確かめあう。
雪は止まない。
白く色付いた路地裏にふたり。
ふたりに、雪の降り積む。