第38章 昔馴染みと月明かりー路地裏イチャイチャin自来也&綱手ー
「朝まで呑むのか」
自来也が残念そうに腕組みした。
「結局まーたこのパターンかよ。少しは大人の展開ってモンになってもいいだろうによ。頭を冷やしてばっかりいると石頭になるぞ?」
「馬鹿だな。十分大人の展開じゃないか」
ゆっくり距離を縮めて来たのだ。焦らず互いに歩み寄っていければいい。
いつどうなるかわからない身の上同士、だからといって例え結ばれなくても臍を噛むような後悔はないだろう。寂しく辛い思いをしても心は変わらない。
私たちには、幾星霜かけ共に育んできたものが確かにあるのだから。
しかし。
「…私は兎も角お前はどうだかわからんなぁ…。何しろどうしようもない助平爺だから…」
「何じゃ、そりゃ」
「がっつくなってことだ。大体いい年をして酔っ払った連れを路地裏に連れ込むヤツがあるか。見え透いた真似をしおって」
「お前が吐きそうだっちゅうからしょうがなくじゃろ?そら余裕があったらわしだってもっとまともなとこに連れ込むわ」
「尚悪い。お前はいっぺん頭をリセットしろ。何でもかんでも色話に持ち込みおって、一体幾つなんだ、お前は」
「自分の年を数えてみれば自ずからわしの年も思い出されるぞ…ぁだ…ッ」
「年の話しはするな」
「お前が始めたんじゃろ!?」
「知らん」
路地裏を後にした月影がふたつ。影だけみれば手を繋いでいるように見えるのに、ちょっと離れて歩くふたり。
猫が鳴いて、それきりしんとなった月が明るい路地裏の深更。
ただ先刻までじゃれあっていたふたりの、仄かな温みの名残りが柔らかい。