第33章 腹いっぱい
「おお、干柿メイドでしたか。それは素晴らしい。すっこ抜ける。…すっこ抜ける…?………ふ…」
「……ふって何です」
「いや。可愛らしいなと思って」
「…何でしょうね。今うっかり死にたくなりましたよ」
「え?死んじゃヤですよ、干柿さん。あはは」
「………」
「凄い青筋ですねえ…。今にも血液がマーライオン…」
「…牡蠣殻さん」
「はい」
「今日は私の誕生日です」
「知ってますよ。おめでとうございます」
「は?知っていた?」
「知ってますよ。好きな人の誕生日くらい」
「……そうですか。それは意外ですね」
「貴方と私が会ってから三度目の誕生日ですね」
「まあそうなりますね」
「三年、死なずに生きてくれてありがとうございました。これからも頑張って長生きして下さい」
「…どういたしまして…」
「何で変な顔してるんです?今日はそういう気分の日なんですか?」
「放っておいて貰いましょうか」
「ああ、もしかしてお照れになっていらっしゃる?いやぁ、そんな恥ずかしがらなくても…」
「欲しいものがあるんですがね」
「あるんですか!よかった、なら遠慮なく仰って下さいな。どうも私、貴方に要りようなものがトンと思い付きませんで、ここ1.095日往生していたので非常に助かります」
「素直に聞くと言う選択肢はない?」
「聞いたら答えて下さいました?」
「答えませんね」
「でしょうね」
「わかってるじゃないですか」
「そういうところはわかり易いと思うんですよ、干柿さん」
「ふん?ではどういうところがわかり難いんです」
「あちこち」
「あちこち?」
「そちこち?」
「そちこちですか」
「はい」
「何だかよくわかりませんが、まあいいですよ。わかった事にしておきます。面倒くさい」
「あはは、それはいいですね。面倒くさいからわかった事にしておく。いいですね」
「いいんですか、そんなのが」
「だって余程仲が拗れてるか、近しいかじゃないとそんな事相手にわざわざ伝えないでしょう?半端な仲でそんな事言ったら、それこそ面倒になってしまいますから」
「…あながち間違ってはいませんが、あなたに言われると何で腹がこう立つんですかね」
「もうそういう条件反射が身に付いてしまってるんじゃないですか」